不動産売買について、その概要と売主側、買主側双方から見たポイントをご紹介していきます。
不動産売買は、経験があればすんなりとイメージが沸くものですが、経験がない場合には、何かと難しく考えてしまいがちな部分もあります。
そういった意味で、本記事では、経験の浅い方にも読みやすいように、売主視点と買主視点双方から説明を行っております。
不動産売買では、大金が動くだけに、そのポイントを適切に理解することで、万一のリスクに備えておくことが大切です。
不動産売買を身近なものに感じられるように、どうぞ記事をご覧下さいませ。
※この記事は、約5分程度で読むことができます。
不動産売買とは一体どのような経済活動なのか
不動産売買とはその言葉の通り、不動産という商品について、所有者が売主となり、購入希望を持つ人が買主となって、売買契約を締結することです。
不動産売買契約を締結し、当該契約をその内容通りに実行することによって、目的物である不動産の所有権は売主から買主に移動し、それに代わって、買主から売主に対して売買代金が支払われます。
不動産とは、社会通念上は土地や建物を意味するとされていますが、厳密に言えば、民法という法律に定められた法律上の概念であって、明確な定義を持っています。
すなわち、民法86条では、「不動産及び動産」というタイトルが掲げられ、1項で、「土地及びその定着物は、不動産とする」と規定されています。
また、民法86条2項では、「不動産以外の物は、すべて動産とする」と定められています(なお、3項は無記名債権の規定なので省略します)。
つまり、一般に使われている不動産という言葉には、「土地及びその定着物」という正式な法律上の定義があるのです。
不動産売買という表現における「売買」という概念も、不動産と同じく、れっきとした法律上の概念です。
民法555条では、「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と規定されています。
この条文は、民法の中でも一、二を争う重要な規定ですが、その抽象性ゆえに、正確に理解するのが難しい条文の一つです。
不動産売買には売主と買主の両者が不可欠
不動産売買という経済活動は、不動産という対象について、所有者が「売りたい」という意思を持ち、それに対して、買主が「お金を支払っても良いから手に入れたい(買いたい)」という意思を持って、かつ、それが合致してはじめて成立します。
つまり、不動産売買は売主が欠けても成立せず、買主が欠けても成立しないという性質を持っています。
不動産売買と一言で表現しても、その類型には様々なものがあります。
また、不動産の規模、立地条件などによって、様々な契約条件が考えられます。
身近な不動産売買の一例は、住宅ローンを組んで中古住宅(土地付き一戸建て)を購入するケースでしょう。
この場合は、土地という不動産と、中古住宅(建物)という不動産について、所有者との間で売買契約を締結することによって、その所有権を取得しているという意味での不動産売買の一例です。
土地付き一戸建てのマイホームを取得するためには、土地の所有者と土地売買契約を締結するとともに、建物の所有者との建物売買契約も締結する必要があります。
それらの売買契約がすべて正確に締結され、かつ、登記上の処理などもミスなく処理されて初めて、土地及び建物を自ら法律上において、所有することができます。
不動産売買を売主視点から分析する
自らが所有する不動産を売りたいと思った場合、後々トラブルに巻き込まれないために、いくつか注意すべき点があります。
仲介業者選定が重要
まず、仲介業者の選定に細心の注意を払うことです。
企業間の不動産取引であればまだしも、一般の方が不動産売買を行う場合においては、不動産の所有者が自ら買主候補を見つけて、さらに、直接買主と交渉することは考えにくいでしょう。
なぜならば、不動産売買には、民法などの法律の知識や、契約締結交渉などの実務上の知識、さらには、不動産登記法などの登記関連の専門知識も必要となるので、一般の方が自力で行うには、かなりハードルが高いからです。
そこで、ほとんどの売主は、不動産仲介業者を介して買主を見つけ出し、売買契約締結の事務作業も不動産仲介業者に依頼することが多いのが現実です。
したがって、満足できる不動産売買を行おうとするならば、仲介業者の選び方は極めて重要です。
この点において、仲介業者もボランティアではないので、なるべく多くの手数料を得るための経営努力をしています。
売主としては、不動産仲介業者の言いなりになるのではなく、しっかりと業者である会社本体の体制や、担当者の交渉能力をチェックしながら、納得できる仲介業者を選ぶことが重要です。
買主の人となりを適切に把握すること
次に、買主の人となりをしっかりと分析することが求められます。
不動産売買において、買主の質というのは極めて重要です。
不動産業界は、多額のお金が動く業界だけに、クレームの多い買主、反社会的勢力、またはそれに近い買主、資金を支払わないなど詐欺まがいの行動を取る買主など、あらゆる人が存在します。
したがって、売主としては、買主がどのような人間なのか、身元はしっかりしているのか、資力はどうなのか、契約後にトラブルを起こすような人間ではないかなど、しっかりと人となりを把握しておくことが大切です。
なお、不動産売買においては、売主の関心事として、「なるべく高い金額で売却したい」というトピックがあるでしょう。
この点、不動産売買における売却価格は、基本的には客観的な事情、条件によって決定されるので、契約交渉によって大きく変動することはありません。
多少の上下はあったとしても、市場価格と大きく乖離しない程度の金額に収斂するのが一般的です。
ただし、不動産売買という契約類型の特徴は、買主の意思と売主の意思が合致すれば、契約自由の原則によって、不動産売買契約は完全に有効になることです。
例えば、買主が、「市場価格は2000万円程度だと認識しているが、特別の思い入れがあるので、3000万円で買いたい」という希望を出していれば、売主としては、3000万円で売却しても何ら問題はありません。
したがって、無理に売却価格を釣り上げようとするのではなく、「高く買ってくれる人」を探すことが、不動産売買において売主が高く売るためのコツと言えます。
不動産売買を買主視点から分析する
買主側が、特定の不動産(土地、建物)を気に入り、大金を払ってでも自らが所有したいと思った場合にも、不動産売買の売主の場合と同じように、いくつか注意すべき点があります。
不動産について徹底的に調査する
まず、購買意欲の高い不動産について、徹底的な調査を行うことです。
不動産売買は、数千万円のお金が動くものであり、目的物である不動産について正確に理解しておくことは、どれだけ時間をかけてもかけすぎということはないでしょう。
理想としては、不動産鑑定士などの専門家に依頼して、当該不動産に法律上の瑕疵がないか(建築制限など公的な規制を見落としていないか)、当該不動産の今後の市場価格はどうなっていくか(不動産の価格が大きく下落してしまうような都市計画が予定されていないか、不動産のまわりに日照を阻害するような巨大ビル建設計画がないか)など、様々な調査を行うことが求められます。
このように、リスクをなるべく排除することによって、後々後悔することがない不動産売買を実現することができます。
万一のトラブルに備える
次に、後々発生するかもしれないトラブルに備えて、できる限りの準備をしておくことが大切です。
不動産売買では、大金が動くだけあって、詐欺まがいの売主に遭遇してしまうケースも皆無ではありません。
そこで、多少費用はかかりますが、不動産の購入を決断する際には、弁護士などの法律専門家に相談をして、当該不動産売買について、法律上何らかの問題がないかどうかをチェックしてもらうことが有効的です。
この点、弁護士などの法律専門家は、民法や不動産登記法、消費者契約法などのプロフェッショナルなので、具体的な不動産売買の契約書を法律的な側面からチェックし、買主にとって不利な状況があれば、条文の修正もすることができます。
具体的には、瑕疵担保責任などの売主の責任を強化したり、反社会的勢力排除条項を入れたりすることで、万一、売主が反社会的勢力の場合には、売買契約自体を無効にするなどの処置を取ることができます。
こういった事前のリーガルチェックを経ることによって、無用なトラブルを避けることができます。
弁護士費用は数十万円程度かかるかもしれませんが、不動産売買自体の金額が数千万円であることを考えると、十分ペイするだけの出費と言えましょう。
なお、不動産売買における買主にとっても、やはり売買金額は最も気になるところであり、なるべく低いコストで購入したいと考えるでしょう。
この点、不動産の価値・相場は、基本的に立地条件などによって決まるので、なかなか大きく値下げさせるのは難しいのが現実です。
しかしながら、売主が提示している金額に納得できない場合は、自ら不動産鑑定士に依頼して適正金額を説明し、地道な交渉を行うことによって、少しでも安く購入することは可能です。
ただし、あまり値下げ交渉をしてしまうと、売主の売却意欲を削ぐ結果となり、不動産売買自体が不成立になるというリスクもあるので、値下げ交渉はほどほどにしておくことが賢明と言えます。
まとめ
不動産売買を上手く行うためのポイントについて、売主視点と買主視点で、それぞれ見ていきましたが、いかがでしたでしょうか。
本文中でも何度か取り上げていますが、やはり不動産売買というのは、大金が動くものであり、一筋縄ではいかない部分もあります。
それでも、要所要所で有識者を活用することで、売買をより円滑に進めることができるようになります。
特に不動産売買の経験が浅い方は、有識者を活用することをお勧めします。
そこに支払う費用が多少嵩んでしまっても、後々のリスクヘッジ部分を考慮すれば、十分価値のある費用と言えるでしょう。
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