物件価格を決定する要素には様々なものがあります。
駅からの距離や築年数などが一般的な要素となりますが、そういった一つ一つの要素を勘案しながら、物件の適正販売価格が定められていくことになります。
また、価格設定を行う際の手法についてもご紹介していきます。
取引事例比較法という過去の販売事例を参考にするものや、物件の築年数に応じて販売価格を設定する原価法などがあります。
本記事をご覧いただき、複数の要素や手法から物件販売価格が設定されているということをご理解いただければ幸いです。
物件価格は周辺環境など複合的な要因によって決まる
不動産物件の価格は、様々な要素が複合的に考慮されることによって決まります。
物件の立地や環境などの状況をもとに、売却に関する数字が設定されることになります。
そして、物件の将来性についても考慮されます。
将来性が見込めると判断された物件は、それだけ価格も高めに設定されます。
駅からの距離が近い物件は価値が高い
では、具体的にはどのような要素で決定されるかというと、まずは駅からの距離です。
基本的には、駅から近いかどうかによって判断される部分が大きいです。
そもそも駅から近い物件は、非常に便利です。
駅から近い物件は、通勤・通学に関する利便性が高いということは確実に言えるでしょう。
電車通勤・通学をする人が多いと思いますが、自宅から駅までの距離が近ければ近いほど便利なのは、皆さんも実感するところではないでしょうか。
例えば、自宅から駅までバスで20分かかる物件よりは、駅から徒歩3分の物件の方が、日々の通勤・通学は楽でしょう。
また、駅の近くは、様々なお店があるところも多いです。
毎日の買い物などを考慮すると、自宅からお店までの距離が近い方が良いのは言うまでもありません。
こうした事情が考慮されて、駅から近い物件は価値が高いと判断されやすいです。
それゆえに、駅から物件までの距離は、価格を決定する上で重要な要素となります。
また、その駅自体の利便性も大きなポイントになってきます。
複数路線が通る駅もあれば、1路線しか通らない駅もあるでしょう。
複数路線が通る駅ならば、それだけ利便性が良いと言えます。
反対に電車が1路線だけとなると、複数路線と比べて色々な場所への交通アクセスも不便になります。
不動産物件の価値は、交通の利便性に左右されやすいと言えます。
様々な場所に対するアクセスが良い方が、価値が高いと判断されるためです。
築年数が浅い物件は価値が高い
また、築年数なども、物件の価値には関わってきます。
原則として日本では、築年数が浅い物件の方が高く評価されます。
外国の場合は、築年数が長い物件の方が査定価格も高くなりやすいですが、日本の場合はその反対です。
なぜならば、築年数が浅い物件はあまり使われた形跡がなく、より新築に近い物件と見なすことができるためです。
不動産会社としては、使用感が見られず、新築感のある物件を高く評価する傾向があります。
つまり、使い込まれた物件の場合は、それだけ価値が低いと見なされます。
ですので、築年数が浅い物件は、査定価格も高めになる傾向があります。
ただし例外もあり、不動産物件によっては、築年数が長くても改装工事やリフォームなどが行われていることもあります。
その工事によって、住み心地が良くなるケースもあります。
築年数が20年ほどの物件に対して、リフォーム工事が行われることもあるでしょう。
その場合は、物件の相対的な価値も高まる傾向があり、売却価格なども、それだけ高くなる傾向にあります。
このように、物件の価値を決定する要素は、色々とあります。
それら複数の要素によって物件の価値を見極めた上で、大まかな価格が決定されることになります。
取引事例比較法と原価法による物件価格算出
第1段落でご紹介したように、複合的な要素によって物件価格が決まるケースが多いですが、ここで決まるのは大まかな金額となります。
さらに細かい価格となると、また別の手法によって決めていくことになります。
周辺地域にある他の住宅の売却事例を見てみると、参考になります。
ほとんど同じような物件があった場合は、他の建物の売却金額も参考にしてみると良いでしょう。
取引事例比較法による物件価格算出
例えば、築年数が10年で、駅から徒歩4分前後の建物があるとします。
そして、近隣地域の建物を見てみると、同じく築年数が10年くらいで、駅から徒歩4分前後の建物がたくさんあるとします。
後者の多くの建物の中には、過去に売却された物件も存在するはずです。
その価格を見た上で、算出された金額が妥当なのかどうかを判断する手法があります。
例えば、第1段落で述べた立地や築年数、駅の路線数などによって、一旦は売却見込み額が1,500万円と決定されたとします。
しかし、その金額が妥当かどうか、不安になることもあるでしょう。
その場合、上記のような他の物件の売却事例を調べることが重要です。
そうして例えば、過去に1,200万円で物件が売却された事例があったとします。
それも1件や2件だけではなく、かなり多くの物件がそれ位の価格になっていたとしましょう。
この場合、上記の1,500万円という数字の見直しが必要になります。
過去にそれだけ低価格で売却されていたわけですから、最初に設定した数字は少々高すぎると判断される可能性が高いです。
ですので、1,500万円ではなく、1,100万円台くらいが妥当ではないかと見当がつけられることもあります。
このようなやり方は不動産業界では一般的で、多くの会社がこういった方式によって価格を設定しており、この手法は取引事例比較法と呼ばれます。
原価法による物件価格算出
また、取引事例比較法でなく、原価法と呼ばれる手法もあります。
主に、築年数によって金額を算出する手法です。
そもそも建物を作るためには、様々な建築コストが生じます。
例えば、その建物を作るために要するコストが、トータルで2,000万円近くだと仮定します。
その場合、物件の売却額は2,000万円近くと設定されることもあります。
しかし、それに対して、築年数によって修正を行うことがあります。
上記の2,000万円という数字は、あくまでも新築物件に対するものです。
実際には、築年数による減算を行うことになります。
年数が10年経過した物件なら1,400万円見込みで、15年近くならば1,200万円見込みなどといった具合です。
そうして、物件の価格を推定する手法が、原価法と呼ばれるものです。
ちなみに原価法は、主に一戸建ての物件に対して適用されます。
集合住宅には、あまり用いられることがありません。
また、土地物件に対しても、原価法で金額が算出されるケースは比較的少ないと言えるでしょう。
物件価格設定と利益の兼ね合い
様々な手法を組み合わせて物件価格が決定されるわけですが、それに関する苦労話も色々とあります。
端的に言うと、利益の問題が絡んでくるためです。
まず、第2段落でご紹介した「駅から徒歩4分で築10年」の物件の1,200万円という事例ですが、果たしてそれで採算が取れるか否かの問題が浮上してきます。
確かに今までの取引事例などを見ると、1,200万円という金額なら妥当なようにも見えます。
ところが、不動産会社に対する利益を考慮すると、それで妥当かどうか疑問視されることがあります。
不動産会社としては、もちろん物件価格はできるだけ高くしたいものです。
そうでないと、売上の数字なども良くなりません。
本来なら2,000万円近くで売却できる物件を、1,000万円で売却してしまえば、大赤字になってしまう可能性もあります。
平均値を考慮すれば妥当に見えても、不動産会社としては悩んでしまうこともあるわけです。
また、他の会社との兼ね合いの問題もあります。
ライバル会社などの存在を考慮すると、価格を低くせざるを得ないこともあります。
もう一度上記の1,100万円近くの事例ですが、別の不動産会社ではその価格でも問題ないと思ったとします。
1,100万円と設定しても、十分に採算を取ることができるからです。
ところが、ライバル会社を意識すると、1,100万円では厳しい可能性が浮上してきます。
というのも、その地域で営業活動を行うライバル会社によっては、低い金額を弾き出せることもあります。
そのライバル会社による価格設定が、例えば1,050万円だとします。
その場合、上記の1,100万円という数字では、そのライバル会社に負けてしまう可能性があるでしょう。
不動産会社にとって望ましくないのは、自社の顧客を他社に取られてしまうことです。
得意客を取られてしまえば、それだけ会社の売上にも影響を及ぼしてしまいます。
したがってこの場合、価格を1,050万円以下に抑えなければならないこともあります。
ただし、自社の利益の問題もあるので、1,050万円に設定すべきか否かは、悩ましい問題となります。
いずれにしても、他社の状況や利益などは、物件の売却価格に反映されることは間違いありません。
売上を考慮した上で価格を決めるのは、とても大切なことです。
このように、物件価格は、複数の要素によって決定されます。
単純に駅からの距離などの1つの要素だけで決まるのではなく、多彩な要素が絡みあって、最終的な売却価格が決定されることになります。
まとめ
物件の販売価格設定について、その決定要素や設定手法についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
駅からの距離や築年数などは一般の方でもイメージがつきやすい要素と言えますが、取引事例比較法と原価法をはじめとして、さまざまな手法やノウハウを用いながら、物件価格が設定されていることをご理解いただけたのではないでしょうか。
当然、不動産会社の利益も絡んでくる問題ですので、一筋縄ではいきませんが、長年の手法やノウハウによって適正価格が算出されていると言えます。
物件購入の機会や、販売する機会があれば、こういった価格算出手法を頭に入れておくのも良いかもしれません。
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